舞台裏の匠たち第6回難波の舞台化粧品専門店「美壽屋」(3/6)
2回目からは好みがわかっているように
大阪の大衆演劇の劇場はこの10年でドッと増えました。美壽屋を訪れる役者さんも増えているのでは。
ありがたいことに、役者さん同士の横のつながりでうちをご紹介していただいたり、新しく劇団を立ち上げるときにご利用いただいたり。色々なご縁で、今は大衆演劇のお客様がものすごく増えています。
劇団は全国を移動しますから、遠くに行かれたときは?
お電話で化粧品の注文を受けて、発送しています。翌日に着くように。やっぱり、皆さん『できるだけすぐ欲しい』という感じなので(笑)。出前を注文する感覚に近いのかもしれません(笑)。
それにできるだけ応えて、お客様の思われるように届けるということを心掛けています。
スピーディな世界ですし、毎日、昼夜で化粧されますから、消費量も多いと思います。化粧品が必要になるサイクルもかなり早いのでは。
早いですけど、買い方は皆さんそれぞれです。というのは、役者さんそれぞれで、好みが本当に細かいんですよ。
たとえば白粉一つ取っても、種類や金額の違いがあって、この人はこれという風に使われるものが決まっている。やっぱり、うちはその細かさに応えていかないと。
商売を成り立たせるには、1つのメーカーだけ置いていてもダメです。昔からこの繰り返しで、役者さんがこういうのが必要だとおっしゃるのに応じて、だんだんアイテム数が多くなってきました。
そのアイテムはありませんと言ったら、それでおしまいなんだけれども、そうはいかない。それを揃えるのが仕事です。
普通の化粧品をメーカーから仕入れて、一般の人に売っているという商売ではないので、舞台化粧品はやっぱりちょっと奥が深いと思います。
奥が深いと言うと?
役者さんというのはまどろっこしいことは避けて、ツーと言ったらカーとわかってほしいという方が多いですから。極端な話、1回ご利用いただいたら、次回からは『もう全部、自分の好みはわかっててほしい』と、思って来られるわけです(笑)。
2回目のご利用からは、「美壽屋さんはもう自分のことを知っているはず」と。
そう!役者さんって、そうなんです。大衆演劇の役者さんは、それが強いかもしれませんね。『この前の注文のとき言ったから』って、この前というのが何ヶ月前でも、1年前でも、そう思われるみたいです(笑)。
どうやって各役者さんの好みを覚えているのでしょうか。
注文はノートに控えて記録しています。1回1回、丁寧にやっていくのみ。その積み重ねしかないですね。
「流し目のスナイパー」の名で知られる、竜小太郎さんもこちらへ来られています。ご自身のYouTubeチャンネルで、美壽屋さんを訪問されていました。
はい、竜小太郎さんにはずっとお世話になっています。うちのドーランを気に入ってくれて、周りにもすごく薦めてくださいました。
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