KANGEKI2023年1・2月合併号Vol.75

舞台裏の匠たち第7回着付け師・大門良美さん(6/6)

劇場:浅草木馬館 大衆劇場取材日:2022年10月30日
舞台裏の匠たち 第7回 着付け師・大門良美さん (6/6)

着付け師の仕事現場密着取材!

2022年8月。良美さんは浅草木馬館に一か月通いで着付けをしていました
朱光座長の女形の支度
わずか2分で着付けます
出番が迫り、二人とも動きながら最後の調整
出番直前、舞台袖で朱光座長の帯を最終直し。「木馬館は楽屋から舞台の間の廊下が細く、帯が壁に当たって崩れてしまうことがあるので、必ず舞台袖までついて行って直します」
細い廊下。ここで帯をキープするのが大変だそう
お手伝いに来ていた藤乃かなさんに請われて後見結びを教えることに
結び方を見ていて「なるほど~!」と腑に落ちた様子のかなさん。「後見結びは任侠の女性の結び方と芸者の結び方があります。かな座長に教えたのは任侠の女性の結び方のほうです」と良美さん
朱光座長の立ちの支度。光る手錠が目を引きます
「手錠は劇団朱光の太夫元が大門のために作ってくれたものです。今は朱光座長がお使いです。今日は16日で大門の月命日ですから、こちらを付けて踊ってくださるのだと思います」
朱光座長の個人舞踊。渋さの中に故人を偲ぶ気持ちが滲みます
手錠を使って踊る大門力也さん(良美さん提供)
手の空いた時間があれば着物を畳みます
「大門の妻として細々したことに気がつけるよう、意識するようになりました」と良美さん。たとえば鏡に付いた小さなカゴ。「朱光座長がお使いのアイコスをすぐに入れられるように付けました」
被り物をした鬘。「このあと姐さん被りで出る場面があると聞いたので、あらかじめ鬘に被せておきました」
この日は朱光座長の師匠である若葉しげるさんのゲスト日。座長がしげるさんの舞踊を観に舞台袖へ行くと、良美さんも黙って座長の後をついて行き、「帯を解きに来たんです。朱光座長は師匠の踊りをいつも初めから終わりまで観るので、帯を解いてじっくりご覧になりたいだろうなと思いました」
お芝居の出番前の龍之助さんに「役に合うよう、前掛けがあったら良いのでは?」と良美さんから提案。前掛けを結びます
座長だけでなく新人の座員さんの着付けも。キュートなリボンの形になりました
取材日のラストショー
朱光座長と良美さん

この月はお弁当の手配も良美さんが担当していました。着付けしながらも「お弁当は26日に20個ですね!」と声に出して確認。手も頭も同時に回転する姿は、楽屋のスーパーバイザー!

取材班から、最後の質問をしました。

 

良美さん、着付けとは?

良美

着付けとは?ですか…。思いやり・機転・感謝ですね。私の想いを着付けとして、形にしてます。私の主観ですが、【普通=埋れる】【目立つ=突出】。突出するよう、一生勉強していきたいと思います。

取材後記

ずっとブログを拝見していた大門良美さん。くすっと笑わせるユーモアと、丁寧な人柄の伝わってくる文面に、どんな方だろうと想像を膨らませていました。実際にお会いした良美さんは、声がふんわり柔らかく、こちらの気持ちもふわーっと優しくなるような方でした。インタビューが力也さんのことに及んだときは、「すぐに泣いてしまうんです」と目を潤ませて、話してくれました。深い深い愛の中に、ずっと生きておられる人だと思いました。

役者のパートナーかつ、ご自身が役者でない方の場合、その仕事ぶりが表に出ることはほとんどありません。けれど舞台で咲く花にとって、楽屋で休まず動き続ける、その人の手が水であり、土であると感じました。

大門良美さんブログ&ツイッター

取材・執筆:お萩

劇団情報

劇団朱光

東京大衆演劇協会所属劇団の中でも唯一の、女性座長が率いる劇団。 特にお芝居を重んじ、日々稽古に励んでいる。

座長水葉朱光の独特の感性は、芝居と舞踊ショーを魅力的なものとしている。 さらに水廣勇太・水城舞坂錦両副座長をはじめとする有望な若手たちが、舞台に力強いダイナミックさを与える。

2018年に創立15周年を迎えた。

劇団朱光公演予定

劇場情報

浅草木馬館 大衆劇場

東京都台東区浅草2-7-5

浅草木馬館 大衆劇場公演予定