かんげき2023年7月号Vol.79
舞台裏の匠たち第10回神戸の床山チーム「中川かつら」(4/4)
椅子に座り、作業を三人で分担
中川
いま、僕たちはこうやって椅子に座っていますけど、本来は地べたに座ってやるものなんです。椅子に座っているのは、うちぐらいです(笑)。
そうなんですか!でも長時間作業ですし、椅子のほうが足腰には良さそうな気がします。
中川
はい、地べたで作業すると、まず腰をやられてしまいます。それに、立ち上がったときにフラっとします。だから椅子のほうが良いんじゃないかと思って、東京から戻ってきてから、僕は椅子でやることにしました。出張のときは、座布団の上に座って作業しています。
三人でどのように仕事を分けているのですか?
中川
この人(原田さん)には、毛を染めたり、ざんぎりとか前をセットするものをお願いしています。この人(平川さん)には、癖直しと、立ち役の鬘をやってもらっています。いなせとか、二つ折りとか、御家人とか。僕は、女形専門です。
効率的な分担制ですね。
中川
そのほうが早いし、僕が楽できるでしょ(笑)。
千鶴子
どれから先にやるべきかわかるよう、下に貼ったほうから進めています。
たくさんの劇団さんに信頼されていることがわかります。
中川
4人もの親方さんについた床山さんは、たぶん少ないので、よそにはない色が鬘に出てくるのかと思います。だから、ありがたいことに、うちの仕事は重宝していただいています。櫛さえあれば、どこに行っても通用する。この技術が、財産ですね。
中川かつら
編集後記
多世代が、いきいきと働いている「中川かつら」。伝統の技術を芯に置きつつも、職人の体を大切にし、作業効率を最大限発揮できるように「チーム化」「仕組み化」されていることが、わかりました。
大衆演劇の幕内も、現代社会とともに大きく変わっています。大衆演劇を支える人々も、また然り。持続可能な、職人の現場を見ることのできた取材でした。