大衆演劇にまつわるあれこれの言葉。
お芝居の中に出てくる言葉から、大衆演劇独特の言葉まで、知っておくと大衆演劇がより楽しめます。このページでは「た」行の用語について解説します。演目や題材については演目豆事典をご参照ください。
た
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代貸/代貸しだいがし
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太鼓持ち/幇間たいこもち/ほうかん
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代官だいかん全国各地にある天領(幕府の領地)の管理にあたる、現場の役人です。時代劇では越後屋と組んで私腹を肥やすパターンがよく知られていますが、実際には非常に忙しい上に、些細なミスでも罷免させられてしまう厳しい職務でした。
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大衆たいしゅう一般の人々のことを指します。昔は「だいしゅう」と読み、一般の僧兵のことを指しました。
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大衆演劇たいしゅうえんげき
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体積たいせき大衆演劇の舞台となる江戸時代に使われていた体積の単位には以下のようなものがあります。合や升は現在でも使われることが多いです。
- 勺(しゃく)
- 18.039ミリリットル程度です。
- 合(ごう)
- 180.39ミリリットル程度です。現在でも炊飯器はこの単位を使っています。
- 升(しょう)
- 1803.9ミリリットル程度、つまり約1.8リットルです。現在でも日本酒はこの単位を使っています。
- 斗(と)
- 18039ミリリットル程度、つまり約18リットルです。現在でも一斗缶はこの単位を使っています。
- 俵(ひょう)
- 米俵に入る米の量で、明治時代に4斗分と規定されています。つまり2.5俵で1石となります。 あまり身分が高くない武士は扶持(給料)が○○俵取り(ひょうどり)であると表現されます。
- 石(こく)
- 180390ミリリットル程度、つまり約180リットルです。人間一人が一年間に食べる米の量とされ、農地の収穫の単位となりました。大名や旗本の領地も○○万石、何千石などといった言い方をします。
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台本だいほん演劇を行うための、セリフや役者の動きなどを書いた本。大衆演劇においては、基本的にありません。詳しくは稽古をご覧下さい。
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大名だいみょう大きな領地を持っている、身分の高い武士です。江戸時代では原則として1万石以上の米がとれるとされた領土を持っていた家の当主を指します。大衆演劇の芝居で登場する場合には、とんでもなく偉い人として扱われます。
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抱き子だきこ舞台の上で、抱かれた赤子。大衆演劇では役者さんの子供が実際に抱かれて出演することも多く、「初舞台が0歳」という役者さんもしばしば見られます。
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立ち役/立役たちやく
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殺陣たて演劇において、刀による戦いのシーン。立ち回りとも言う。大衆演劇にとっても重要な要素で、詳しくは剣劇をご覧下さい。
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立女形たておやま
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達引きたてひき
- 義理や意地を張り合うこと
- 遊郭において、遊女が客の支払いを立て替えること
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店たなお店のこと。特に大規模な店は大店(おおだな)とよばれます。
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旅たびかつて大衆演劇は旅芝居、役者は旅役者と呼ばれたように、旅は大衆演劇と切っても切れない物です。大衆演劇の興行スタイルを旅興行といいますが、巡業、巡演とも言います。千秋楽の少し前から、徐々に荷物を次の公演先に発送し、千秋楽を迎えると全ての荷物を撤収し、座員まるごと大きなトラックに乗って次の公演先に向かいます。ついたら荷物を降ろして、また次の公演に備えます。多くの大衆演劇劇団はこれを毎月やっているのです。
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タペストリーたぺすとりー劇場の壁にかけられた、役者さんの写真などがデザインされた壁掛け。ひいきのお客さんから贈られた物もあります。時間が空いたら眺めてみるのも楽しいです。
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玉三郎たまさぶろう
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太夫元たゆうもと劇団の経営面における最高責任者です。歌舞伎に置ける興行元のことを太夫元と言っていたことに由来します。座長が兼任することや、一線から退いた元座長が就任していることが多いです。劇団によっては設置していないところや、別の呼び名で呼ばれることもあります。
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知行ちぎょう武士の領地を指します。知行取りと言った場合には、主君から扶持米ではなく土地を与えられているという意味で、格式が高い武士であることを意味します。
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チビ玉ちびたまチビ玉三郎のことで、もともとは桜光洋・白龍光洋などの芸名で、幼いながらも女形役で舞台に上がっていた嘉島典俊さんのことを指します。1990年代にはフジテレビの人気シリーズ特番「頑張れ!チビ玉三兄弟!(後五兄弟)」で若葉五兄弟が「チビ玉」として取り上げられた事もあり、子役の大衆演劇役者を指すことも多いです。
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中歌舞伎ちゅうかぶき明治時代の言葉で、江戸時代の都市に小屋を構える事を許された歌舞伎劇団の系統である「大歌舞伎」に対して、各地を旅して廻る劇団を指します。その興行形態は大衆演劇の祖であるといわれています。
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忠臣蔵ちゅうしんぐら元禄時代に起こった、旧赤穂浅野家の家臣が吉良上野介を討ち取った事件を元にした演劇作品「仮名手本忠臣蔵」と、そのジャンルの作品を指します。大衆演劇においてもいくつかの忠臣蔵ものの脚本があります。お岩さんで知られる「四谷怪談」も忠臣蔵物の一つです。
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宙乗りちゅうのり役者をワイヤーでつり下げ、空中を飛ばす演出。スーパー歌舞伎の市川猿之助さんが用いた手法として知られていますが、大衆演劇でもかつてはよく行われていました。
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丁髷ちょんまげ頭頂部をそって、後頭部の髪の毛を束ねて頭の上に乗せる、江戸時代の男性髪型一般をさすことが多いです。本来は、後頭部の髪の毛を束ねて頭に乗せるまげ(髷)の部分が小さい髪型を指し、老人の髪型でした。町人の成人男性は現在でも関取の方がしている大銀杏(おおいちょう)のように側頭部を大きく盛り上げる、銀杏髷の形をとることが多かったです。粋な旦那の髪型は本多髷であるなど、まげの中にも流行がありました。武士は同心などを除いて一般的に側頭部を盛り上げることはしませんが、大名家ごとにかなりまげの形は異なり、まげを見ただけでどこの大名の家臣かということが分かったそうです。
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面つら舞台の客席側に最も近い場所を指します。反対側は奥です
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連つらね抑揚をつけた長台詞で、もとは花道で言う物を指しました。
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手打ちてうち
- 大入りになった時に、劇団の方の号令で、会場が一つになって手拍子を打つことです。
- 身分の高い武士が自ら下の者を斬ることです。
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手代てだい
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丁稚でっち
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戸板といた雨戸に用いられる板。よくけが人を乗せて運びます。
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トイレといれ劇場でも欠かせない設備です。もちろん男性用と女性用に別れていますが、お客さんが多い時には男性用でも思いがけない方が利用されることがあります。落ち着いて対処しましょう。
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東京大衆演劇劇場協会とうきょうたいしゅうえんげきげきじょうきょうかい東京の大衆演劇劇場と劇団の親睦団体。前身は戦後まもなく発足した「なかよし会」です。昭和35年(1960年)に再編され、現在の協会となりました。
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同魂会どうしんかい紅劇団紅あきらさんを総会長とする劇団の壁を越えた公演を行っている団体です。たびたび特別公演を行っておられます。関連団体では、同魂会の若手による優魂会(ゆうしんかい)もあります。
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同心どうしん
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灯籠抜け/灯篭抜けとうろうぬけセットにある石灯籠に飛び込んで、姿を消したり、石灯籠から姿を現したりするケレンです。
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遠見とおみ背景パネルや背景幕など、最も遠くの背景が描かれているものを指します
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土左衛門どざえもん水死体のこと。成瀬川土左衛門という力士の風貌のようであったことからそう呼ばれます。時代劇などではは身元を調べたり犯人を捜したりということになりますが、実際の江戸時代では、場所によってはそのまま流すということもよく行われていました。
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渡世人とせいにん
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とちるとちる失敗することを指します。舞台に出るタイミングを間違えた場合の「出トチリ」といった用に使われます。
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都々逸どどいつ三味線の伴奏で唄われる歌で、七・七・七・五のリズムで唄います。「恋に焦がれて 鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が 身を焦がす」等が知られます。文政年間(1820年ごろ)に都々逸坊扇歌によって大成されたと言われます。
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賭場とば
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とぶとぶ次に言うべきセリフが出てこないことを指します。
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富くじ/富籤とみくじ現在で言う宝くじのことで、興行元は多くはお寺や神社でした。これは寺社の建築費や修繕費にあてるためです。
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鳥目とりめ現在では夜盲症という、暗い場所では目が見えにくくなる病気。
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捕物とりもの
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緞帳どんちょう舞台最前面にある、分厚い織物の引き上げ式の幕です。あがる時に開演、下がると休憩・終演と、公演の節目に舞台を仕切ります。
参考文献
- 「芝居通信別冊 大衆演劇座長名鑑2003」オフィス・ネコ(2003年)
- ぴあ伝統芸能入門シリーズ「大衆演劇お作法」ぴあ(2004年)
- 木丸みさき「私の舞台は舞台裏 大衆演劇裏方日記」メディアファクトリー(2014年)
- 宮本真希「大衆演劇における『お花』とは何か―見せることの意味―」(2013年)
- 鵜飼正樹「大衆演劇はグローバル化の時代をどう生き抜くか?」(2011年)
- 「江戸時代の1両は今のいくら?―昔のお金の現在価値― 」 日本銀行金融研究所貨幣博物館