「やっさん」こと中山安兵衛(堀部安兵衛)は、剣にかけては凄腕ながら、大酒飲みが玉に傷という素浪人。その日も酔っぱらって八丁堀の長屋に戻ってきたところ、海苔屋の婆さんが手紙を持って待っていた。
手紙には、叔父の菅野六郎左衛門が、村上兄弟と高田馬場で決闘をすると書いてあるではないか。
「なんということだ!」
「ばあさん 今何時だ!なに、辰の下刻?!」
一目散に高田馬場を目指して走りだす安兵衛。
「やっさん、また喧嘩かい」
「喧嘩じゃない、叔父上だ、叔父上を助けねば」
「え、なんだって、菅野様が?」
心配した婆さんも追っかけて走り出したのですが・・・
「・・・ここはどこだ?」
時は2017年、場所は京阪電鉄京橋駅。
なんと江戸から離れた場所にタイムスリップしてしまいました。
高田馬場へ急ぐ安兵衛、どうしたらいい?
「やっさんやっさん、この上に電車っていう”早馬”が走ってるんだって!」
「よし、乗せてもらおう」
「切符を買わないといけないんだよ」
「切符?」
「みんなここに銭を入れていたよ」
「わかった、銭だな」
「私がやってあげるよ(胸どん)」
小判なので入りません
「婆さん、本当に大丈夫か?」
「だ、大丈夫・・・(入らない)」
なんとか?改札を通過
「では行って参るっ」
「やっさん、私も行くよ」
「大丈夫だから婆さんは来なくていいって」
「動く階段」に婆さんびっくり
「やっさん、怖いよ〜」
「だから来なくていいって言ったのに。おお、早馬が見えてきた、もう少しだ〜〜〜!」
・・・・いくら早馬でも、ここは関西。タイムスリップしたところが悪かった。京阪電車がどんなに早くて便利でも、さすがに江戸までは行けないのです。
とぼとぼと引き返す二人を、慰めるように雨が降ってきました。
「やっさん、ごめんよ。私が早馬に乗ろうなんて言ったばっかりに(ぐすん)」
「いや、婆さんは悪くない。いつも酔っているわしが悪いのだ」
「やっさん」
「もう酒はやめだ。浪人でも武士は武士。婆さん、わしは今日限り酒を止めて剣術に励むぞ・・・あれ、雨が上がった・・・?」
「やっさん、ここは」「!?」
なんと、高田馬場の決闘場〜〜〜!!
安兵衛の改心が天に届いたか。タイムスリップで戻ってきた場所はまさに「高田馬場」、時は元禄辰の下刻!
「叔父貴どの!」「おお安兵衛か!」
「助太刀いたす〜!」
万事休すからの起死回生。無事、安兵衛は加勢することができたのでした!
「やっさん、かっこいーー!」
——- 完 ———
今回のロケは、京阪電鉄様から特別に許可を頂き、なんと京橋駅構内で。
他のお客様のお邪魔にならないよう速やかにミッション遂行。ファンの方がたに見守っていただきながら滞りなく終えることができました。
剣戟はる駒座 津川鵣汀座長・副座長お疲れのところ誠にありがとうございました!
ロケに際し、京阪電鉄の皆様はじめ羅い舞座京橋劇場様に多大なるご協力を賜りました。改めて感謝申し上げます。
ご協力いただいた企業さま:
なお、撮影した写真は「KANGEKI」2017年8月号(7月1日発売)の表紙を飾る予定です。どうぞご期待ください!