KANGEKI2021年6・7月合併号Vol.59
木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!第6回錦はやと~劇団錦座長~(前編4/4)
そこで、初めて、博行は真剣に大衆演劇をみたのである。実家の商売柄、大衆演劇をみたことはあったが、その日は。心が揺れる思いで、芝居も舞踊ショーを観た。
博行は、今までの人生で受けたことのないような衝撃をうけた。特に市川英儒の女形は、初めて見るにもかかわらず、憧れをもって凝視した。
そこで、博行は、あることに気がついた。
大衆演劇というものは、芝居や踊りを舞台で表現することで、客を感動させられるということである。つまり、お客にみせるパフォーパンスは、自分でやりかった「歌」で、お客を幸せにできる。と通じるものであった。心が、楽しくなってきた。
父の野間口社長も将来プロモーターになるために、役者の経験を積むこともいいだろうという考えで、賛成した。博行は、勤めていたホテルを退社して、劇団三桝屋に入団した。野間口博行は「錦博行」となり、役者としてのデビューを果たした。 博行、20歳の春のころである。
しかし、ホテルマンをやっていた新人に大衆演劇の修行が楽なわけもなく、必死の修行で日々を送った。その時、世話になったのが、三桝屋3兄弟の末の英儒であり、お互いの人生の分岐点を共にすることになる。
(次号へつづく)
プロフィール
小野直人
生年月日 | 1953年 |
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1953年 滋賀県大津市生まれ。日本大学・農獣医学部卒業。
小野牧場オーナー、総合学習塾 啓数塾塾長、構成作家(テレビ、ラジオ)を経て、現在は、あがりゃんせ劇場の木戸番として、多くの大衆演劇の劇団や幅白い大衆演劇のファンと交流をもつ。「KANGEKI」で「木戸番のエッセイ」を連載中。