かんげき2024年7・8月号Vol.90

木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!第30回恋月彩圭前編(2/4)

劇場:スパリゾート雄琴 あがりゃんせ
木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇! 第30回 恋月彩圭 前編(2/4)

恋月彩圭は、本名を黒澤美香という。
生まれは1979年(昭和54年の未年)12月4日で、現在44歳。 星座はいて座で血液型はO型である。

12月4日が誕生日の人は、独立独歩を望む性格であるが、交渉力と人脈作りに天性の才能がある。 一見、楽観的でありながらも、実利的で決断力があって何事にも精力的である。 先取の気性に野心があり、勤勉で意思が強く、成功を手にいれるためのチャンスを見極める目をもっている・・とか。

(「誕生日大全」より)

恋月彩圭こいづき さいか
2022.3.13 水車小屋

美香は神奈川県厚木市の生まれだが、育ったのは神奈川県の愛川町であった。

愛川町は、神奈川県の北部に位置し愛甲郡に属する町で、町内を流れている中津川には県民のみならず関東で生活する人々を電力で支える「宮ヶ瀬ダム」がある。

西部には丹沢前衛の山々が連なる風光明媚で静かな町である。 しかしながらその静かな町も春から夏にかけては、町民がこぞって楽しむお祭りで盛り上がり、その活気の中、人と人とがふれあう人情溢れる町でもある。

お祭りの花形は、神社で行われる劇団による芝居と踊りであるが、現在あるメジャーな大衆演劇のそれではなく、役者といっても、普段は各々に仕事をもっている芝居好きや踊り好きの人によって組織された素朴な劇団である。

そんな中に、美香の祖父や祖母もいたが、その祖父・祖母。もとは、れっきとした大衆演劇の役者であった。

元女優の祖母は、美香の母を大衆演劇の女優にするために、幼い頃から舞台に上げて芸を磨いていたが、美香の母は芸事になじめず、女優になる気などさらさらなかった。 結果、黒澤家の大衆演劇への道は潰えて、祖父母は美香の母を小学校に通わせるために自らも役者をやめてしまったのであった。 そして、美香の祖父は、料理人になり、家族を支えた。

そんななかであったが、祖母は、その日も町の春祭りを楽しんでいた。 そんなとき、祖母はこんな出来事に遭遇した。 お祭りの舞踊ショーの真っ最中のことである。 舞踊ショーの中、笑い声があがっている。 不思議に思って客席を見るとなんと3歳の美香が人混みの中で踊っているではないか、この光景を見て祖母は、意を決する。 孫の美香を「花柳流」のおっしょさんについて新舞踊を習わせたのである。

美香は、習ったばかりの踊りをお祭りがあると大人に交じって披露していた。 ところが、美香が田代小学校の小学2年の頃である。7歳になると、地域でも、学校でも友達が増える時期である。 友達と遊びたくて踊りから離れてしまった。

しかし、舞踊の神様は美香を離さなかった。 小学6年の冬、11歳になった美香は謝恩会でおどった「男船」(神野美伽)で踊りの魅力にもう一度触れ、稽古を再スタートするのであった。

再スタートから4年後、とんでもないことが、美香に起こった。

美香も愛川中学校に進み、15歳になった時である。 「花柳流」のおっしょさんは、石川さゆりの「恋は天下のまわりもの」の振り付けを美香への課題として出したが、おっしょさんは美香の振り付けを見た瞬間、「この振り付け、あなたが作ったものではないね。」と語気を荒げた。

あたかも祖母の手を借りてつくったとばかりに強く言い張った。 美香は誤解を解こうと、おっしょさんに何度も詰め寄ったが、結局、話を聞いてもらえず退会という形になってしまった。