木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!第30回恋月彩圭前編(4/4)
Ⅲ
そして、「月宮香恋」という名でお祭りや発表会にも出ていたが、香恋が24歳の時である、大和市の生涯学習センターに特別公演として南條隆とスーパー兄弟が乗った。
公演の前座の中に、月宮香恋が踊る姿があった。 香恋は劇団「南條隆とスーパー兄弟」の中に懐かしい姿を発見した。 座頭をしていた「川島のぼる」の姿である。
川島のぼるとは、香恋が幼い頃に会ったきりである。 座頭が大人になった香恋を覚えているかは甚だ疑問だったが、次の月の公演先に、川島のぼるに会いに行った。
自分は、川島のぼる座長が率いていた「若草劇団」にいた梅島六郎の孫であると告白した。
「えっ!あの厚木の六郎の~」。
それから、稽古を見せてもらったり、大路にしき姉さん(スーパー兄弟の実母)に化粧の仕方をおしえてもらったり、特別参加という形で舞台に出させてもらったりもした。 この出会いから、香恋の生き方が変わる。
スーパー兄弟との距離を縮めた香恋は、スーパー兄弟の弟・影虎(現・三代目南條隆)に憧れて追っかけを始める。 性格的に思い詰めるようで、追っかけも中途半端ではなかった。
平成15年、影虎を神奈川から佐倉湯パラタイス、そして浜松まで追っかけたが、浜松では、浜松バーデン・バーデンで3座合同公演(劇団南條隆とスーパー兄弟、劇団勇舞、松平劇団)が行われていた。ウィークデイは仕事をして、土日を観劇にあてていた。
公演を観ている内に、劇団勇舞とも親しくなり、澤村姫之介総座長の長女 津島竜妃さんと親密になった。
そのおかげで、劇団勇舞の舞台にも出せてもらうようになり、澤村姫之介総座長から化粧を教えてもらったり、幕内の礼儀など、いろいろな事を勉強させてもらった。 座長の長女である津島竜妃は数年前に役者を辞めたが、かれこれ20年あまりも連絡を取り合う仲になり、現在も友達である。
※
その頃から、地元の月宮流の家元は香恋に「師範昇格」を勧めてきた。
しかし、香恋にはそんな気はもうとうなかった。結局、その申し出は断ったが、この出来事をきっかけに家元との意見の相違も表面化してきて、月宮流を辞める決心をする。 通常、流派をやめると名前の返上と踊ってきた曲は使用禁止になるが、家元はそこまではしなかった。
しかし、美香は「月宮香恋」を返す決心をした。2004年のことである。
(続く)
プロフィール
小野直人
生年月日 | 1953年 |
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1953年 滋賀県大津市生まれ。日本大学・農獣医学部卒業。
小野牧場オーナー、総合学習塾 啓数塾塾長、構成作家(テレビ、ラジオ)を経て、現在は、あがりゃんせ劇場の木戸番として、多くの大衆演劇の劇団や幅白い大衆演劇のファンと交流をもつ。「KANGEKI」で「木戸番のエッセイ」を連載中。
劇団情報
劇団寿
2013年8月、黒潮劇団に所属していた寿翔聖が、新潟県の三条東映にて旗揚げ。「お客様に笑顔になっていただきたい」をモットーとし、少人数ながら太鼓ショーやオリジナルのお芝居などバラエティ豊かな舞台を展開し、ファンをつかむ。2017年9月に寿美空が若座長襲名。こどもたちの成長にも期待がかかる。