舞台裏の匠たち第8回羅い舞座京橋劇場棟梁・岸本健司さん(2/5)
準備万端の棟梁ノート
羅い舞座京橋劇場はオープン時、道具はどの程度揃っていたのでしょう。
一通りはありましたね。だいたいのことに対応できるような物は揃っていました。その後、僕がちょこちょこと作ってきて、全体の半分とまではいかないですが、まあまあの量があります。最近はあんまりトンカンしてないなぁ。
この10年の間に、道具のバリエーションが揃ったからでしょうか。
そうですね、だいぶ対応できるようになってると思います。
今日の昼のお芝居(『温泉宿の一夜』)は、どんな道具を使われる予定でしょうか?
今日は『二重(にじゅう)』と…。
ここで、ノートを確認していた岸本さん。各劇団のお芝居ごとに場面・道具を記録してある、貴重なオリジナルノートを見せてもらいました。
一部、訂正の棒線が引かれています。
同じお芝居でもやるたびにちょっと違うところがあるので、『前回はこうだったけども、今回はこれで』って劇団さんに言ってもらって、前回の記録に棒線を引っ張って訂正します。お芝居が終わった後で、新しいノートのほうに書き足しておきます。
前の内容に書き足していくという、効率的な方法なのですね。
上のノートが前回2022年1月に劇団花吹雪さんが乗ったときのもの、下のノートが今月(2022年12月)のものです。書いているときは本当に、走り書きです(笑)。
劇団さんと打ち合わせしながら書いていますが、序幕・川町、下手・木戸、中央・床几、丸盆に湯のみ二つにおちょこが一つずつ…みたいにバーッと言われて、それを聞きながら手を動かすので。
『川町(川と街並みの描かれた背景)よろしく』とだけ言われることもあります。川町だったら何でもいいよ~ということですね。
「よろしく」と言われたら、どのようにされるのですか?
『それは、人がいるところ?いないところ?』などと劇団さんに聞きます。人がいるんだったら、土手や灯籠を出したいです。でも、魂かけて闇討ちする場面だったら、人はあまりいないだろうから、古びた壁を出して寂しげにしたりします。
こういう劇団さんとの打ち合わせは、昼夜の公演の間にやる劇団さんもあれば、夜の部終演後という劇団さんもあります。今月の花吹雪さんは、昼夜の間に5日分くらい、まとめて打ち合わせする形です。
外題表に書き込んでいる4桁の数字の意味は?
過去のノートのどこに書いてあるのかが、わかるように印をつけています。たとえば『1512』だったら、2015年12月公演でも同じ芝居をやっているということです。
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