旅芝居ささえびと第4回がんこ座代表取締役・井口光史さん「何よりも、お客さんが来やすい劇場にすること」(2/3)
お客様の声で「ほな、一回計画しましょか」
好きで観ていた大衆演劇が、仕事になっていかがでしたか。
大変ですね(笑)。劇場の仕事は、全然、苦にはなっていませんが、やっぱり観ているのが一番楽しいです。
オープンから5年。大変なこともたくさんあったと思います。
最初は、地元の人がここに劇場ができたということを、全然知らないわけです。まずは広く知らしめていかないといかんということで、インターネットで泉州地域の介護施設を全部、ザーッと出して、順番に出向いていきました。最初の頃は、宣伝しても、なかなか結果が出なかったですね。
オープンから2年過ぎて、ようやく、そういう施設の方が団体客で来てくれるようになりました。今はまたコロナで難しくなっていますけど、多いときは月に24ぐらいの団体客がありました。
そういった努力があってこそ、地元のお客さんに根付いたのですね。がんこ座の会員というサービスもあります。
劇場会員さんは、いま150人ぐらいいます。会員さんについては、座布団代を無料で貸し出したり、会員さん限定の千円デーをやったり、お得なサービスをしています。コロナが始まる前は、劇場会員の皆さんで、バスで日帰りの所へ行くツアーをやったこともありました。
日帰りツアーはどちらへ?
箕面温泉スパーガーデンに行きました。箕面でお風呂に入ってもらって、食事してもらって、大衆演劇を観てもらうという。
がんこ座の会員ツアーで、他の大衆演劇の公演地へ行かれたのですか!
しょっちゅうじゃないですけどね(笑)。だから、がんこ座が休みの日にしました。これも、劇場会員のお客さんのほうから声があったんです。どっか連れて行ってください!という(笑)。ほな一回計画しましょか、ということで。
常にお客様第一で動かれているんですね。
お客さんによく言われるのが、エレベーターは付けられないの?ってことなんですけど、建物がだいぶ古いので、耐震の関係で付けられないんですよ。なので、お元気な方には階段をのぼって健康になってもらおうと(笑)。
車椅子で来られた方がいたら、スタッフ3人がかりで車椅子を持ち上げています。
大入りスター“がんこ太郎”
井口さんが、舞台に役者として上がられる日があるということです。
この6月も2回上がっています(笑)。芸名は「がんこ太郎」。駒澤輝龍座長(真芸座輝龍)の命名です(笑)。
がんこ太郎はどんな風に誕生したのでしょう。
きっかけは、2019年1月に輝龍座長が、がんこ座に乗ってくれたことでした。輝龍座長とは、私が和歌山で大衆演劇を観ていた頃から、お互いに見知りだったんです。
劇団さんはよく『○○祭り』というのをやっているので、輝龍座長に『がんこ座の祭りをやってください』って言ったんですよ。じゃあやろうということになったんですが、『がんこ座の祭りなんやから、社長が出てもらわな、困りますよ』って座長に言われて、エエッ?!と。私には何も経験がないですから。
『踊りなんてできないんですけど、稽古してくれるんですか?』って聞いたら、『適当に舞台上がって、指さして動いとったらいいわ』と言われて、またエエッ?!と。
『稽古してもね、きっと緊張で飛んでしまうので、そうなったらもう動けなくなるから』と。だから稽古なしで適当に動いていたほうが良いわ、と言われて、もう無茶苦茶でしょう(笑)。
では、ぶっつけ本番で本番に臨まれたのですね。
そうそう。とりあえず女形と立ち役で、自分の好きな曲を決めて、何回も何回も曲を聞いてイメージして、役者さんが踊っている仕草を見ました。自分も同じようなことをしようと思ったんですけど、当然ながら、実際はできないですね。化粧だけは劇団さんにやってもらいました。
がんこ座のお客様は、大喜びだったと思います。
たしかに、みんな怖いもの見たさで来てくれました(笑)。
そのあとも継続して出演されています。
僕自身は黙っているんですけど、やっぱり劇団さんが乗せてくるんです。次に来た劇団さんも、『先月舞台に出てましたよね、社長。今月もそろそろ』って言ってくるんですね。もうちょっと勘弁してくれと言うと、『他の劇団のときは出て、なんでうちは出ないんですか』とか言われるしね(笑)。
じゃあ出ましょうかということで、これまで10回以上は出ていると思います。自分からは一切言わずに、口にチャックしているんですけどね。あんまり出すぎるとね、ただの出たがりやと思われるから(笑)。
大人気で、いまや、がんこ太郎が大入りを総なめにしているという話もあります。
最近、出すぎているんで、飽きられていないのかどうか(笑)。
大入!井口社長古希祝特別公演
2022年5月10日、井口社長の古希を祝う特別公演が開催され、大勢のお客様で賑わいました。(5月の公演劇団:市川ひと丸劇団)
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