KANGEKI2021年11月号Vol.63

舞台裏の匠たち第3回朝日劇場裏方・古田貴栄さん裏方現場密着レポート

劇場:朝日劇場取材日:2021年10月9日
舞台裏の匠たち 第3回 朝日劇場裏方・古田貴栄さん 裏方現場密着レポート

開演前

11時に劇場に入ると、昼の部の準備の最中でした。

その日の舞踊ショーで使う幕を吊るします
道具作りは、道具方経験の長い山田さんが主に担っているそうです
仕上げに舞台の掃除。いよいよ第一部・ミニショー開幕…と思いきや

急な変更

劇団メンバーが急いだ様子で訪れ「大変!一部で背景幕、使います!」
古田さん「(穏やかに)あら!わかりました~!」再び舞台に集合します
背景幕を手際よくセット。
古田さん「大丈夫。間に合えばOKです!」と、にこやかに事が済みました

お芝居

 ミニショーが終わり、続いて第二部・お芝居の準備に入ります。

劇場の雪。
舞台で降っているところはよく見ていますが、この状態で見ると重みを感じます
青木さんと山田さんが雪をつかみ、穴の開いた袋状になった部分に詰めていきます
お芝居『男の人生』の一場のセットを準備する古田さん
鈴東さんは、床にテープで段ボールを固定しています。
「今日のお芝居で血糊を使うからです。血糊をこの上で吐いてもらうと、緞帳や床に零れず、片付けが早いんです」
『男の人生』の舞台転換は三回。転換一回の時間は2~3分です。バタバタと音を立てないように、でも全員、速足で動きます!
転換時は、劇団メンバーと裏方チームが協力して、道具を動かします。そのチームワークを観て、古田さんに「事前に劇団さんと打ち合わせされているんですか?」と伺うと、「いえ、全部ぶっつけ本番です。(エッ?!)お芝居の図面を見て、それぞれの判断で動いているんですよ」
お芝居中、碧月心哉座長が古田さん・鈴東さんに声を掛けました。「血糊の量が多いので、段ボールの範囲で収まらないかもしれません」古田さん「大丈夫ですよ!床にはみ出した血糊はすぐ拭きますから」
血糊の場面が終わり…ほとんど段ボールの内側で収まりました
古田さんが、床についた血糊を猛スピードで拭き取ります
お芝居は大詰め。先ほど準備した雪を、ここで降らせます。
古田さんがロープを引っ張ると、雪が舞台にちらついていきます

お芝居の後は舞踊ショーが始まります。
緊迫したお芝居中よりは、舞台袖にも少しリラックスした空気が流れます。

とはいえ、急な変更には都度対応。終演が近づいてきた14:45、劇団メンバーから「この曲はカット」と言われて、香盤表に赤字を引きます。古田さん「今日はお芝居が長かったので、時間が押してるんです。だから特に変更が多いですね」
ラストショー前、舞台袖で出番を待つ碧月心哉座長と、古田さん。舞台の表と裏のリーダーです

取材後記

急な変更にも焦らない、動転しない。周囲をホッとさせてくれる雰囲気の古田さんを中心に、朝日劇場の裏方チームには和んだ空気が流れていました。忙しない舞台裏の作業の合間にお邪魔しましたが、こちらが恐縮するほど丁寧に時間を取って、お話を聞かせていただきました。

執筆:取材;お萩

劇場情報

朝日劇場

大阪府大阪市浪速区恵美須東2-1-26

朝日劇場公演予定