演目豆辞典

大衆演劇では様々な題材が取り上げられており、黎明期である江戸時代から、人気のある演目というのがいくつも生まれています。ここではそういった演目や題材について少しだけ説明します。もっとよく知りたくなったら、劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか。ただ、劇団ごとに演出や脚本がアレンジされていることもありますので、その違いを見極めるのも観劇の楽しさの一つです。細かい用語などについては大衆演劇豆辞典をご覧下さい。

このページでは「た行」の項目について解説します。

  • 瀧の白糸
    たきのしらいと

    水芸の芸人である瀧の白糸(本名・水島友)は、乗合い馬車の御者である村越欣弥に命を救われる。欣弥が法律家となる夢を断念したことを知った白糸は、自ら援助して欣也を法律家の道に進ませるのだが…

    原作は泉鏡花の小説「義血侠血」。新派劇の題材となり、舞台では水芸のシーンが見物です。

    • 滝の白糸
    • 村越欣弥
  • 俵星玄蕃
    たわらぼしげんば

    赤穂浪人である杉野十平次は、蕎麦屋に身をやつして吉良邸の様子を探っていた。そんな十平次の蕎麦屋の常連となったのが俵星玄蕃という浪人。客とかりそめの店主という間ながらも、二人は親しくなるのだが…

    もとは文化年間(1804年-1818年)に成立した講談で、いわゆる忠臣蔵ものの一つです。三波春夫の楽曲「編歌謡浪曲 元禄名槍譜 俵星玄蕃」は歌唱時間10分近くになる大作で、代表曲の一つでもあります。大衆演劇ではショーの際に用いられ、槍を使った演舞が見所です。

    • 杉野十平次
    • 俵星玄蕃
    • 大石内蔵助
    • 吉良上野介
  • 丹下左膳
    たんげさぜん

    右目に大きな傷跡があり、右腕を失って左腕一本ながらもめっぽう強い剣士の物語です。

    もともとは林不忘の小説の登場人物で、最初は脇役でしたが人気が出て、主人公となりました。ニヒルなキャラクターであることが多かったのですが、「丹下左膳余話 百萬両の壷」など明るい正義感のあるキャラクターで登場する場合もあります。

  • 近松門左衛門
    ちかまつもんざえもん

    江戸時代の浄瑠璃作者(1653年(承応2年)- 1725年(享保9年))。「出世景清」、「国性爺合戦」、「曽根崎心中」など、浄瑠璃や歌舞伎の基本となる作品を次々に産み出した、日本のシェイクスピアとも呼ばれる人物です。

  • 忠臣蔵
    ちゅうしんぐら

    播州赤穂(現兵庫県赤穂市)の大名、浅野内匠頭は高家筆頭吉良上野介のいじめに耐えかね、ついに江戸城中で刃傷に及んでしまう。お家断絶となった浅野家の家老、大石内蔵助は討ち入りを叫ぶ家臣達をなだめるが…

    いわゆる日本三大仇討ちの筆頭で、当時から大きな話題を集めた元禄赤穂事件を扱った題材です。忠臣蔵の題名は、寛延元年(1748年)に初演となった「仮名手本忠臣蔵」に由来します。これは歌舞伎や浄瑠璃の脚本として最高峰ともいわれて、数多く上演されました。いわゆる忠臣蔵ものも大人気で、映画や芝居でも「困った時の忠臣蔵頼り」という言葉が生まれるほどでした。「仮名手本忠臣蔵」では史実の名前と異なった役名が用いられていますが、大衆演劇の役名はおおむね史実の物が用いられています。「お軽と勘平」「赤垣源蔵徳利の別れ」などの場面も有名です。また、お岩さんで知られる「東海道四谷怪談」は、忠臣蔵の外伝として書かれたもので、関連する人物も登場します。

  • 月形半平太
    つきがたはんぺいた

    長州藩士である月形半平太は、京都において遊興に明け暮れてばかり。同志である尊王攘夷派の志士は憤激するが、半平太には思惑が…

    行友李風の戯曲で、新国劇を代表する作品でもあり、舞台化・映画化も多くなされています。「月様、雨が」「春雨じゃ、濡れて参ろう」というセリフが有名です。

  • 釣忍
    つりしのぶ

    大店の息子であった定次郎は、芸者のおはんと所帯を持ったことで勘当されてしまう。二人はつつましい暮らしを続けていたのだが…

    時代小説の大家、山本周五郎の描いた人情もの。つりしのぶとは、シノブ(シダの一種)を井桁などの形にして、軒先などに吊るすもので、しのぶ玉とも言います。

    • 定次郎
    • おはん
  • 天保水滸伝
    てんぽうすいこでん

    利根川をはさんで競い合う二人の侠客、笹川繁蔵と飯岡助五郎の抗争を描いたもの。大利根河原で非常に大規模な決闘が行われたこともあり、歌舞伎や講談の題材となりました。

    繁蔵や助五郎とならぶ登場人物である平手造酒(ひらてみき)は笹川方に味方した浪人で、「止めてくださるな妙心殿、落ちぶれ果てても平手は武士じゃ」のセリフが知られています。

  • 天保六花撰
    てんぽうろっかせん

    二代目松林伯圓の講談で、後に登場人物などの物語が独自の演目となりました。

    天保六花撰とは、河内山宗俊、片岡直次郎(直侍)、金子市之丞、森田屋清蔵、暗闇の丑松、三千歳等の個性豊かな登場人物を指します。

  • 藤十郎の恋
    とうじゅうろうのこい

    上方歌舞伎の名優、坂田藤十郎は、夫のある女性に恋をする役柄を演じることとなったが、その役作りに苦労していた。そんな藤十郎が座付茶屋、宗清の妻であるお梶のもとを訪れ…

    明治~昭和の大作家、菊池寛の小説で、後に歌舞伎の演目として戯曲化されました。登場人物の名前から「お梶」とも呼ばれます。

    • お梶
    • 坂田藤十郎
  • 唐人お吉
    とうじんおきち

    開国したばかりの日本に、アメリカから公使としてやってきたハリス。ハリスは幕府に妾となる女性を要求し、役人は下田の芸者お吉を送り込むこととするが…

    実在の人物である齋藤きちのエピソードが、十一谷義三郎によって小説化されたものです。外国人に強い偏見があった時代で、それと関わることにも非難が浴びせられる時代でした。ちなみにアメリカでもお吉とハリスの物語が映画化されています。また史実のハリスはたいへん謹厳な人物で、女性は看護師として必要としていたのですが、当時の日本人にはその概念が理解されなかったようです。

    • お吉
    • 鶴松
    • タウンゼント・ハリス
  • 毒婦
    どくふ

    毒婦ものは明治時代頃から発生した、実話を元にした演目です。毒婦とは男性を翻弄したり、だましたりするいわゆる悪女にも当てはまりますが、いわゆる「毒婦もの」に登場するのは、どちらかと言えば一途に一人のことを思ったあげくに罪を犯してしまう女性を指すことが多いです。

    高橋お伝、明治一代女の花井お梅、夜嵐お絹などが大衆演劇でよく上演される「毒婦」たちです。